今日は先月設置した I さん宅の表札の写真を撮って来ました。 I さんはつい最近お宅をリフォームされました。一階の間取りを大きく変えてさらに少し増築した都合上、家の外壁も張り替えられたのです。そのリニューアルしたグレーのガリバリウム鋼板のモダンな感じのお家に表札が欲しいという事で相談されました。モダンで都会的な雰囲気になったのは良かったのですが、シンプル過ぎて玄関ドアの周辺が少し殺風景になってしまいました。そこで、インターフォンと玄関灯の間にガラスモザイクで表札を作る事にしました。
モダンな家の外観を見て、名前の文字は漢字やひらがなでは無く、アルファベットが似合うだろうと考えました。アルファベットならほとんど直線だけで構成できて、半ば記号的に表現することが可能なのでモダンな印象になるからです。しかしそれだけではあまりに素っ気無いので、何か曲線的な要素との組み合わせにしたいと思っていました。そしたら、 I さんが私のガラスモザイクハウスのオリーブのモザイクを見て、「これ、とっても素敵でいいわ!」とおっしゃるので、安易でしたがオリーブの模様と組み合わせることにしました。
左下から右上になびく小枝に葉っぱが何枚か付いていて、オリーブの実が隙間に見える図柄にし、その下に名前が入るという構図にしました。文字はCentury Gothicという書体の太字を元にし、オリーブの枝の動きと合わせる為に斜体にしました。ここで、ひとつアイデアが浮かびました。名前の中に I という文字が2つあるのですが、これを小文字にして、点の部分をオリーブの実とダブらせることにしたのです。 I さんに下絵を見せたら即OKが出ました。
前回も書きましたが、モザイクで文字を作るのは結構面白いものです。アップにすると何だか大雑把に見えていい加減に作っているように見えますが、少し離れてみるとちゃんと読めてバランスが良いものが出来ると快感です。
今回の場合も、Century Gothicの書体を殆ど狂い無くぴっちりと作ることは可能です。道具を使えばガラスピースの隙間を潰すことやカーブをキレイに出すことは出来ると思います。しかしそれでは印刷した文字と変わりません。キレイ過ぎて味気ないものになります。一つ一つの文字の隙間のバランス(文字組み)なども印刷用に作った書体には限界があって、カリグラフィーのように手書きの場合は人の感覚で調整出来るのに、調節が利かないのです。モザイクの場合はその辺が自在にできます。今回も作る段階で色々工夫しました。
Zの文字の上辺が縦線に接合している根元の部分を少し下に沈めることによって、反対側の左端が跳ねた感じにしました。それに合わせるためUの文字は上を少し開き気味にし、Mの文字は下をを開き気味にしました。そして、 I の文字は僅かですが太めにして、さらに人に気付かれない程僅かですが上下の端を開くように太くしてあります。このことによって文字全体に動きが出来て、軽くステップダンスでもしているように見せることが出来ました。文字のバランスを取るためにした事は、Zの文字の下辺の線を少し持ち上げて逆にUの文字は下に少し突き出させた事です(これはCentury Gothicの書体も同じですが)。また、Mの文字の右2本の縦線は細くして、隙間も縮めています。そして、頭の I は音にすると1文字で1音ですが、尻尾の I はMとくっ付いて1音なので、 I とZの間は少し開けてMと I の間は詰めました。
今回一番迷ったのが線の優先順位です。 I とUは折れ目の無い1本の線で出来ているので大丈夫ですが、ZとMはピース割りをする時、何処を先に作り、何処を後でくっ付けるかが問題になります。Zは縦線を通してから上辺と下辺を羽のようにくっ付けることにしました。Mに関しては、筆順の早い方から先に作ることにしました。最初の縦線が優先して、次に真ん中、そして右の線が最後に来る順番にしました。ZとMではやり方を変えたのです。つまりこういう事です。Zも筆順の早い方から作ったとしたら、上辺の線が横に一本通ってから縦線になった筈です。でも迷ったあげく、文字全体の縦線のリズムを優先させたのです。
ところで、今回文字を作ったガラスピースは少し贅沢な使い方をしました。金箔を挟んだカラスなのですが、一個 ?百円もする品物で(イタリアのビサッツャ社の製品で、同様の物は12〜3世紀、中世ビザンチン時代からある歴史の古い材料です)、本来なら金箔が見える面を表にして使うものですが、わざと裏にして透明なブルーグリーンの層の奥でギラリと光る金箔を見せています。金色をしていないので、金だとは気付かれませんが、美しいので全くOKです。
PS オリジナルのガラスモザイクの表札のご注文をお受けします。興味のある方はコメントをお書きください。(連絡先などを書かれる場合は非公開でお送り下い)
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by mosaiquedodeca
| 2008-06-25 13:05
| ガラスモザイクの制作