ガラスモザイクに関する様々な事を綴り、紹介するブログ


by mosaiquedodeca
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カテゴリ:阿保さんと耕木杜( 8 )

阿保さんの椅子

 耕木杜が建てる住宅の建築パースを頼まれました。建築パースは、以前ガーデニング業をやっている人と組んで、しばらくの間やったことがあります。
その人と一緒にお客さんの所に伺って、お庭を拝見しながら何処にどんな工作物(デッキ、塀、立水栓等)を設置するとか、どの辺に木を植えるとか、お話をします。同時に庭の寸法を採り、帰ってからそれらをまとめて完成予想図を描きます。平面図を元に水平線の位置、消失点等を設定して一度パースの図面を、線描で完成させます。その上にトレーシングペーパーを乗せてフリーハンドで写し取り、更にそれをコピー機にかけて紙に転写します。フリーハンドで写すのがミソで、定規で引いた線では表現出来ない、柔らかい雰囲気になります。それに簡単に彩色を施して完成です。草花や樹々を付け足して、2〜3年後の庭の状態の絵を描く訳です。そうして出来た絵をお客さんに見せるとほぼ100%仕事が成立するという事で、結構重宝がられました。その頃の絵をどこかで阿保さんが見たことがあったらしく、それで今回頼まれたという訳です。

 下絵(彩色前の線描)が出来たところで、色付け作業は事務所で行う事にしました。ディテールのチェック等をやりながら出来るので都合が良いからです。午前中に彩色の試しを1枚描き、修正事項の確認をしてから、午後にもう1枚描きました。
描き終わったところで阿保さんの工房を覗いてみました。

 実は今、彼はある椅子を作っています。この椅子はちょっと特別な椅子で、さる高貴なお方が座られる予定のものです。(これを作ることになったいきさつについては後日述べます)その第一号が丁度出来たところで、見せてもらいました。作り乍ら修正を加えるのでこれが試作ということになります。予め図面を見せてもらっていたのですが、立体になると全く違って見えます。阿保さんの頭の中には見えていたのでしょうが、私は初めて見たので「へえ〜 こうなるのか〜・・・奇麗だなあ・・」と思わずつぶやきました。そこには平面図ではイメージ出来なかった絶妙のバランスの美しい椅子が立っていました。

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背もたれの部分が大きく湾曲しています。この曲線は私に、上昇気流に乗って空に向かって伸びる帯状の布を連想させました。それは背骨の曲線とも重なって、座ると自然と姿勢がよくなりそうな形です。

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前の二本の足は座面にくっついていません(普通は座面に突き刺して固定させます)。これは中央部分で接合しているので座面が宙に浮いた感じがします。私にはこれが、お供え物の台のように見えました。両手を頭上にかざして手首をくっ付けて持ち上げるイメージです。後から見に来た家内は鳥居の形に見えると言っていました。

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後ろから見た姿が美しいと言ったのは事務所の峰さんと家内。2人とも女性。確かに木の組み方が強度的な安心感を与え、すらっと背筋の伸びたその佇まいは、無駄な贅肉が無いのは勿論、過剰な筋肉も付いていない男性の後ろ姿のようでもあります。

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 前足の角度が少し前のめりなのが何となく気になっていたところ、阿保さん自身の口から、少し角度を修正するという言葉が出ました。「そう、それがちょっと気になっていたんだよ」って言ったら、「小黒さんたちと見ているところが全部一緒なんだよねえ・・・」と驚いていました。実は作る前に図面を見せてもらって意見を聞かれて述べた内容も、すべて阿保さんが気にしていた部分と一致していたようなのです。その時に私たちの意見(と感想)を聞いて、何か踏ん切りがついたようなことを言っていました。 “自分の感覚に素直に従って作ること” に意を強くしたようでした。


 カメラを持っていなかったので携帯で写真を撮りました。画像がぬるいのはその為です。完成して納品されたらもう一度ちゃんと写真を撮って、もう少し詳しくご紹介したいと思います。何しろ、まだでき上がっていないもの、納品されて用に供してもいないものを、ここであまり詳しく云うことは適切ではありません。失礼になりますから。この椅子については後日またお話ししたいと思います。
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by mosaiquedodeca | 2012-07-29 18:15 | 阿保さんと耕木杜 | Comments(0)

耕木杜のガラスモザイク

 前回少しだけお見せした耕木杜のキッチンとトイレのガラスモザイクをご紹介します。先ずはキッチンです。

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 キッチンは引きがあるのでモザイク全体が見渡せます。そこでベースの色を両脇から中心部に向かってだんだん明るくなるように配置しました。中央部は上に窓があって逆光になるので明るい白を、両端は落ち着いたブルーとグリーンの濃い色を主にして左右から中央に向かってグラデーションになっています。模様も全体の色調を崩さないように配慮しました。
 それに対してトイレのモザイクは少し調和を破るような色合いの模様も混ぜました。トイレの狭い空間では全体を俯瞰して見ることは無いからです。赤やピンク等の色合いの模様を配置して楽しい感じにしました。

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赤とピンクが華やかな雰囲気をみせています(実はこの模様は私がデザインしたものではありません。耕木杜の事務所の皆さんに一個づつ作ってもらったものの内の1枚です。丁度良い具合に嵌りました)

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       お手洗いの下にもこの通り模様を配しています

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       棚の真下にも光が廻りこのような美しい反射を見せてくれます


 この耕木杜のガラスモザイクのデザインの手法には、その元になったものがあります。それは我が家 “ガラスモザイクハウス” の洗面室とバスルームです。

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         洗面室               浴室

 毎日我が家の前の道を通って会社に行く阿保さんが、ある時ふっと思いついたのだそうです。 “事務所のキッチンにガラスモザイクを入れてみよう” と。その時にイメージしたのが我が家の洗面室のガラスモザイクだったのです。
 次回はこれをご紹介したいと思います。
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by mosaiquedodeca | 2010-12-09 19:28 | 阿保さんと耕木杜 | Comments(0)
 キッチンにガラスモザイクを設置した耕木杜の新事務所ですが、オープニングイベントのようなものは行わないそうです。その代わりに2Fの多目的室で私の家内が油絵の展覧会を行います。以前から阿保さんは家内の絵を気に入ってくれています。彼は家内の絵を1枚持っていますが、それはある時(何で我が家を訪れたのか忘れましたが)アトリエで、沢山壁に掛かっていた絵の中の1枚を選んで買ってくれたものです。私たちはどの絵を選ぶのか、黙って見ていました。私は、自分だったらどの絵を選ぶかという事は決まっていましたが、何点かの絵はそれほど遜色の無い良い出来映えだったので、好き嫌い、あるは見方によってどれを選ぶかは分からないと思っていました。ところが、しばらく見ていた彼が選んだ絵は、私が一番気に入っている絵でした。絵の見方はいろいろあると思いますが、ずっと家内の絵を見続けている私には家内の絵の中でも本当に手放したく無いと思う絵が何点かあります。家内の絵はずっと変遷し続けて(俯瞰して見ると成長し続け)いて、それぞれのエポックで私にはそう云った気に入った絵が何点かづつあります。その絵はその内の1枚でその日壁にかかっていた絵の中では私が一番良いと思う絵でした。いわゆる “My favorit one” だったのです。阿保さんはどうやら私と好みが合う様です。その絵は柿の絵で、毎年秋になると事務所の壁に掛かっています。

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 展覧会は11月20日(土)から25日(木)まで《耕木杜》にて。案内状には耕木杜ギャラリーと出ていますが、ギャラリーとして作ったものでは無いのでピクチャーレール等はありません。どのような展示の仕方をするのか? 結構工夫が必要になります。場所によっては阿保さんの作った椅子等を利用した展示になりそうです。油絵と家具のコラボのような感じになるかも知れません。その点も一緒にご覧下さい。また、展覧会にお越しの方は是非、事務所のキッチンの壁のガラスモザイク装飾も見ていって下さい。
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by mosaiquedodeca | 2010-10-29 10:28 | 阿保さんと耕木杜 | Comments(0)

耕木杜の仕事・中間報告

 前に大工の阿保昭則さんの会社、耕木杜の新しい事務所にガラスモザイクの装飾を頼まれているという事を書きました。台所とトイレの壁なのですが、実はもうとっくに設置は終わっています。7月末に貼付けました。しかし事務所自体は左官工事や家具や事務具?(事務机や本棚)の設置、外構工事等がまだ出来ておらず、それらがすべて終わってから写真を撮ってご紹介しようと思っています。
 一昨日の夕方どこまで出来たか様子を見に行ってきました。

 いつものように事務所の建物の脇を通って仕事場の奥の仮事務所に行こうとしたら、新事務所に灯が点いていて中に人がいます。事務の人達が窓側に向かって仕事をしていて、中を歩き回る阿保さんの姿も見えました。どうやら仮事務所をたたんで引っ越したようです。玄関に回ってドアを開けて「こんにちは」。 中では阿保さんがしゃがんで椅子の足に何かしており、耕木杜のリニューアルしたホームページを作っている “おかめさん”(※)がカメラを持って小さな物を撮影していました。奥から峰さんが姿を現し嬉しそうな顔で迎えてくれました。前に来た時は左官工事が終わったばかりで家具類が全く無かったので壁の存在感がものすごくありました。しかし、今は木のテーブルや棚などが入り丁度良い感じになっています。聞けば今日家具類を運び込んだとのこと。皆さんのなんとなくウキウキした様子は、だからだったのです。うまいタイミングで見に来ました。
 接客スペース、事務室、台所、トイレ、そして2Fにある多目的室(ギャラリーにもちょっとしたセミナーにも使える部屋で、11月には家内の油絵展をやります)を見て回りました。どの部屋もため息が出るくらい良い感じの空間です。それぞれの部屋に基調色があり、目的によってその色が変えられています。その辺りの様子は後日撮影が出来たらご紹介します。
 見終わった後はお茶を飲んで少し雑談をして帰りました。前回、前々回はついついおしゃべりが長くなって、遅くなってしまいました。 “今日こそは長話はしないぞ” と気をつけました。でも、いつも居るわけではない “おかめさん”が居たので、やはり少し遅くなりました。いつも済みません。

※僕らが“おかめさん”と呼んでいる “おかめ家ゆうこ” さんのホームページはこちら


 さて、完成後の写真は後日ちゃんと撮影出来た時にするとして、今回はガラスモザイクの制作と設置のプロセスをご紹介します。

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15センチ角くらいのユニットをひとつづつデザインを考えて100個くらい作りました

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 私1人でデザインを考えているとパターンが決まってきて面白みが足りなくなってきます。そこで思案をしていたら、良いアイデアが浮かびました。 “そうだ!耕木杜の人にも作ってもらおう”。 ということで、阿保さん、峰さん、横内さん、中野さんそして丁度その日仕事に来ていた、前述の “おかめさん” の5人をアトリエに呼んで作ってもらいました。

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        一番若い中野さんの作品。中野の中の字?

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   横内さん。水平垂直、四角、シンメトリー(縦、横、斜め、点、すべて対称)

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       峰さん。渋いなあ。やさしい色合いですね

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唯一、赤やピンクのカラフルな色が入った楽しげなデザインです。さすが “おかめさん” 〈みんなに笑顔を〉がモットーの、他の人を幸せにする人です。
しかし、何処に設置したら良いのか?  周りががすべて押さえた色合いなので・・・ぴったりの場所がありました(それは後日)。

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親方の作品。最初はけっこう派手でしたが、だんだん落ち着いた色合いに。 しかしびっくりしたのは、四角いガラスタイルをサイドビッター(専用のペンチ型カッター)で斜めにカットしてキレイな三角形を作ったこと。普通、四角いガラスは対角線上には割れません。横に逃げてしまいます。私でも難しいのです。見本を見せようとむきになってやりましたが、この日は全然うまく行きませんでした。なのに二回も成功したのです。ちょっと悔しいけど、やっぱり阿保さんはモノツクリの天才なのかな?

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       表面に紙貼りをして

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       乾いたものをひっくり返して

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          並べてレイアウトを考えます

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レイアウトが出来たらもう一度表にひっくり返して番号をつけて現場に持って行きます。

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       設置現場

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       貼付けはタイル職人さんにお願いしました

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          こちらはトイレの壁

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       目地入れ後

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 全体の写真は事務所が全部完成したらまたご紹介します。
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by mosaiquedodeca | 2010-09-26 05:42 | 阿保さんと耕木杜 | Comments(0)
 「透明な感じ・・・木、林・・その中に水が流れている感じかなあ・・・」 ガラスモザイクが設置されるキッチンに案内してくれた阿保さんが言った言葉です。
大工の阿保昭則さんの事務所と作業場が我が家の近くに引っ越して来て、事務所のキッチンとトイレの壁にガラスモザイクを頼まれている事は前に書きました。そこで、建築中の事務所に伺って中を見せてもらった時のことです。

 やはり、耕木杜の事務所ですから木がメインテーマになります。しかしだからといって木をモチーフにデザインすれば良いという訳でもない様です。阿保さんは “透明な水” のイメージを思い描いているようです。 「あっ、いけないね。あんまり色んな事を言うと余計な先入観を与えてしまうね。 とにかく小黒さんにまかせるよ」と気を遣ってくれる発言もありました。しかし、私としては阿保さんがどんなイメージを抱いているかは結構重要です。
 それまで、木の緑色がイメージの中心にありました。それに、木が木材になった時の茶系の色を少し配置して・・・全体では “モスグリーン”。 ビリジャンのような彩度の高い緑では無く、少しくすんだ暖かい感じの緑のイメージでした。
 「透明」、「水が流れる」、この2つのキーワードで少し色彩の計画が変わりました。おそらく阿保さんは「木」そのものだけでなく、木を育てる「水」と「空気」そして「光」をイメージしているのでは無いかと思いました。そして、それらを介して、木も含めたすべての命が循環して、バランスがとれているニュートラルな状態。つまりそれが「透明」なイメージなのでは無いか? と、勝手に解釈したのです。その分析はともかく、色彩的にはモスグリーンから、少し水色っぽく軌道修正することにしました。メインテーマも「木」から「水と木」に変更です。頭のスッキリするようなさわやかな空間が思い浮かびました。

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     下絵です。白から淡い青緑色へのグラデーション

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   ガラスをカットして並べて模様を作ったものに紙貼りをしたところ

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    こういった模様の違ったパーツを100枚くらい作ります。



今の所こんな感じで制作が進んでいます。続きは後日。
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by mosaiquedodeca | 2010-06-29 07:09 | 阿保さんと耕木杜 | Comments(0)
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 朝7時過ぎのことです。我が家の愛犬クーコの散歩の途中、家の前へ続いている道を歩いていると、後ろから来た大型のワゴン車がすーっとスピードをゆるめ、運転席から「おはようございます」という声がしました。声の主はこのブログで何度かご紹介している大工の棟梁、阿保昭則さんです。最近彼の会社「耕木杜」がモザイクハウスの近くに引っ越してきました。阿保さんは毎日我が家の前を通って会社に行っているのです。それでこの頃、今日のように家の近くでバッタリということがよくあります。

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 その耕木杜の事務所の建物はまだ完成していないのですが、台所とトイレの壁にガラスモザイクの装飾を頼まれています。彼とは結構長い付き合いですが、今回が初めてのコラボレーションになります。大体出来ているのですが、今イメージを固めているところです。それについては制作に取り掛かったらまた報告させて頂くとして、今回は阿保さんとどういう訳で知り合ったのかをお話しします。

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     右の建物が事務所になります

 4月26日に書いた日記で我が家の近くに阿保さんの建てた家があることをお話しました散歩道。きっかけはこの家だったのです。我が家を建てた工務店の社長さんに、凄い腕の大工さんが建てた家があるからと、見に行くことを勧められて行ったのが最初でした。私が見に行った時は阿保さん本人はいませんでした。阿保さんの代りに当時弟子だった田中さんという大工さんが案内してくれました。その時に阿保さんのカンナ削りの腕の凄さを説明されました。「うちの親方は凄いんだ。親方の削った鉋屑を新聞の上に敷いてもはっきり字が読めるんだ。」などということを聞いたのを憶えています。その時はそれがどんなに凄いことかもあまり解っていなかったので “へえー、そうなんだ” (※1)と言う感じでした。それより案内された洗面所を見た時に色彩のコーディネートが良く無いということが気になりました。この家は玄関から奥の部屋に行く導線が狭くなっていて洞窟に入って行くような感じにしてあります。そこを通り抜けると急に視界が広がるのがドラマチックで良い演出だと思いました。また、一番奥の座敷の窓が低くなっていて、座った時に外の田圃の景色が丁度良い構図に見えることなど、空間の作り方が素晴らしいのに、どうも洗面所の中だけがそぐわない気がしました。その日1人で見に行った私はそんなことを思いつつ、そのまま何も言わずに帰って来ました。
 しかし、家内は違っていました。別の日に見に行ってとんでもない発言をして来たのです。彼女が行った日は、阿保さん本人が居たのだそうです。聞く所によると、家内は洗面所に入った途端「うわ〜何この色。気持ち悪い!」と言ったのだそうです(最近聞いたらそこまでは言ってないということでしたが)。とにかく、色彩が調和していないということを本人にズケズケと言ったらしいのです。私だったら、たとえ本人がその場に居たとしても言わなかったと思います。まったく女って奴は(済みません、多分一部の女の人だけですね)何と言うか、怖いもの知らずと云うか・・・凄腕の大工さんに向かって何の遠慮もせずに良くそういうことが言えるもんだと思いました。

 ところが、です。阿保さんはそれを聞いて、逆に興味を持ったのだそうです。後日彼は、事務所の峰岸さんを伴って我が家を尋ねてきました。それまで彼にそういう事を言う人はいなかったということでした。  “そんなことを言う人はいったいどんな家に住んでいるのだろう? 見てやろう” と思ったのだそうです。
 その時、モザイクハウスはどのくらいまで完成していたのでしょうか? 浴室のモザイクは出来ていましたが、洗面室はどうだったか? 居間とキッチンのモザイクは? ・・・はっきりとは憶えていません。とにかく家の中を案内しました。そして、お茶を飲んで話が盛り上がったのです。その時いろんな事を話したのを憶えています。その日の話の主題であった色彩の調和のことや住宅デザインのことは勿論、使う材料の事などにも話は及びました。「プラスチック製品はあまり好きでない、化粧合板の家具も避けたい、出来るだけ天然の材料を使いたい」などということで意見が一致したのです。たとえば我が家には既製品の照明器具が一切ありません。工務店の持ってきたカタログを見て、デザインが気に入ったものが一つも無かったので、天井から線だけを出してもらって器具は全部後からくっつけました。 “ジョイフル本田( ※2)” に行って、陶磁器のソケットを買って来て取り付けたのです。トイレットペーパーホルダーも工務店が付けたプラスチック製のものを外して、家の余った木材で作りました。ですからガラスモザイクをふんだんに使った装飾が施されていますが、全体としては素朴な感じの家なのです。フランスに住んでいる友人が来た時など、「スイスの山小屋にいるみたいだね」と言ってました。とにかく、そんなこんなでえらく打ち解けて、意気投合し、友達になったという次第です。
 まあ、妻の無謀な一言が功を奏したという訳です。この間、耕木杜の事務所でコーヒーをご馳走になった時、その時の話になったら「阿保さんが何でも思ったことを言ってもいい雰囲気の人だったから」と言い訳をしていました。確かにそういう頭の柔軟な素晴らしい人ですが、何と言ってもその時が初対面ですからねえ・・・。

※1 ところで、カンナ削りの腕前が良いということがどういう意味を持つのか、阿保さんと付き合っているうちにだんだんと分かってきました。日本のいわゆる伝統工法と呼ばれる建築は、木組みの精度でその強度が全く違うようなのです。つまり、建築基準法で指定されている斜交いの場所や、ボルトの数量などのように設計図や数値で分かる強度でなく、目に見えない “大工の腕前” が地震などに強い家を造る上で大事だということなのです。阿保さんはカンナ削り大会で、他の “腕に覚えのある” 大工さん達を大きく引き離して、考えられないような薄さの記録を持っています。それは、刃物を研ぐ技術が並外れて凄いということでもあります。刃物がちゃんと研がれていなければ、削る木の寸法が正確に出せません。つまり、木組みの精度が作れないということです。長持ちする丈夫な家を造ることが出来ないということになります。カンナ削りを競う大会があるという事はそう云った大工さん達の技量をコンテストにして分かり易く広報して人々の意識を高めようという目的があるのでしょう。こんなことは素人の私が説明するようなことでもありませんので、これで止めておきます。しかし、私自身が経験した驚きの事実をご披露して、その意味の一端をご説明することにします。
 我が家の台所はシンクと調理台、ガス台などが一体となっている既製品だったのですが、ある事情で上の部分だけ残して下の戸棚や食器入れの引き出し、食器乾燥器などを取り外すことになりました。その時、阿保さんに相談して造り直してもらうことにしたのです。土台などを檜材で作ってもらったのですが、何しろ水の掛かるシンクの手前の部分などが、檜とはいえ木材です。水で腐ったりしないのだろうか? と心配でした。阿保さんは「大丈夫!」と断言しましたが、全くその通りでした。何年も経っているのにシミや汚れが付かないのです。何故か? それはカンナで削ってあるので木の細胞が壊れれておらず、そのため水が染み込まず、はじくなからなのです。
 もう一つ。当時我が家には、猛描と云うべき “プータ” が住んでいました。彼はしょっちゅう爪研ぎをしていました。それは、二階にあるむき出しの柱がササクレルくらいヒドかったのです。このままではヤバいと思って段ボールで覆って保護していました。ですから、土台の板で彼が爪を研ぐのではないかと心配しました。折角阿保さんが作ってくれたきれいなものがズタズタにされてはたまらんと思っていたのですが、プータは全くそこでは爪研ぎをしませんでした。何度か爪を研ごうとしているところを目撃しましたが、結局研がなかったのです。いや、研げなかったというのが正しいです。爪が引っ掛かる所が何処にも無かったのです。考えてみればあたり前ですね。真っ平らなのですから無理です。こんなことは大工さんの世界ではあたり前のことなのかも知れませんが、私たちにとっては驚きでした。

※ 2 “ジョイフル本田” は千葉県、茨城県の周辺にしかない、全部でも20店舗くらいしか無いホームセンターです。店舗数は少ないのですが、他のホームセンターには無いものを取り揃えています。私のようなファンには「夢のホームセンター」なのです。

追伸 色彩の選択がイマイチだった洗面室は、その後すぐに阿保さんがやり直して良い感じになりました。
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by mosaiquedodeca | 2010-06-14 08:29 | 阿保さんと耕木杜 | Comments(0)

散歩道

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汗ばむような暖かい日があったかと思うとそれが一日しか保たず、翌日には気温が10度以上も下がって冬のような寒さになってしまう。なんだか今年は変な陽気ですね。いったいいつになったら春が来るんでしょう? もういい加減寒いのは勘弁して欲しいものだと愚痴を言いたくなるこの頃です。
しかしそんな陽気でも、外を観れば確実に春の景色になって来ています。我が家は田園地帯の中にあって、周りは水を張った田んぼでいっぱいです。気温は低かったですが、この土日はよい天気だったので、それが一斉に薄緑色に変わりました。
一年で一番美しい季節がやってきました。枯れ草色だった地面は緑に変わり、木々は常緑樹の黒っぽい葉の中に落葉樹の若葉の色が加わって、いろんな緑の諧調豊かな色合いになりました。田んぼは鏡を貼ったように、その木々の緑と明るい青空のコントラストを映し込んでいます。毎朝のクーコの散歩がとても気持ち良くなって来ました。

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クーコにはいくつかの散歩コースがあります。そのコースを日替わりで変えるので毎日行く道が違います。2日続けて同じコースに行く事はめったにありません。私は基本的にどの道に行くかはクーコにまかせています。彼女がその日のコースをいつどのように決めているのかは不明ですが、その選択には確たるものがあるようです。私が別のコースに誘っても決してそちらには行こうとしません。足を踏ん張って抵抗します。無理矢理引っ張っても一旦は従いますが、迂回して結局自分の行きたい方に行こうとします。それでも違うコースに連れて行った時などは、1時間くらい廻って帰っても、家に入ろうとはせず、また最初に行きたがったコースの方に向かおうとします。結局いつもの倍くらい歩かされることになります。
今日はそのコースの1つ、田んぼ道に来ました。この道は車が殆ど通らないので安心してリードを外せます。田んぼの向かい側には我が家、モザイクハウスが見えます。

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道を進むと前方に佇まいの良い家が一軒見えてきます。

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近付いて見ると、軒が張り出し、厚みがある訳では無いのに比較的どっしりとした屋根です。

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良く見ると梁間方向の屋根の線が直線では無く湾曲しています。どっしりした安定感はこのカーブが醸し出していました。

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表に廻るとこんな感じです。


実はこの美しい家は大工の阿保昭則さんが昔建てた家です。前にも書きましたが、阿保さんは超一流の腕を持った大工さんです。NHKの特集番組でも取り上げられた、日本一の鉋削りの腕を持つ大工なのです。普通そういう超一流の腕を持つ職人さんというと、頑固で怖そうな親父をイメージしますが、彼は全くそういう感じの人ではありません。朴訥とした人当たり穏やかな感じの人です。
彼と知り合ったのはこの家がきっかけでした。この家は我が家を建てて貰った工務店のゲストハウスなのですが、そこの社長さんに「オグロさんの家の近くに今建てているいい家があるから見にいってみたらいいよ。すごい腕の大工さんが建てているんだよ」って言われて見に行ったのがそもそもでした。そこで彼と友達になる元となったある事件が起きるのですが、その話は長くなるのでまたこの次にします。

※ 梁間側から見て中央部が上方に湾曲した屋根は京都の辺りで見た事があります。仕事で京都から滋賀に向かう道中、道路沿いの家々の形がなんとなくふっくらとして良い感じがしたので何でだろう? と思いました。そこで良く気を付けて見たら屋根が僅かに上に湾曲していたのです。どの家もそういう造りになっていて、町並みに風格がありました。それをやる為に大工さんがどれほどの手間を追加しなければならないかは知りませんが、美的観点から見ると格段の違いがあると思いました。それに気が付いた時私はとても感動し、伝統と歴史を感じて、豊かな気持ち包まれたのを憶えています。
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by mosaiquedodeca | 2010-04-26 22:43 | 阿保さんと耕木杜 | Comments(0)

創翔工芸展その2

「このエッジが大事なんだよね」、その一言で私の頭の中に立ちこめていた霧が晴れて見はらしが良くなっていく気がしました。セリフの主は阿保昭則さん。日本一の鉋削りの腕を持つ棟梁です。市原市で先月行われた創翔工芸展に出品されていた彼の椅子の背もたれの部分についての一言です。
大工の彼が何故工芸展に?と思われるかも知れませんが、素晴らしい家具を作っていることを知っている私からお誘いして出品してもらったのです。

創翔工芸展は概ね評判が良かったようです。(勿論課題は沢山残されておりますが)いろんな分野の作品が展示されて、ある程度見応えがありました。個性的な作品が並ぶ中で静かに存在感を示していたのは阿保さんの作品でした。

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阿保さんの作品は、テーブルや椅子としての機能以外の部分にこれと言って目立つ “作意” のようなものは感じられません。ややもすればデザインが施されていないというように思われがちですが、実は私が一番美しいデザインだと思った家具は彼の作品でした。
最初に見た時、先ずテーブルの足の細さが気になりました。少し華奢すぎるのでは無いか?という風に見えたのですが、もしかしたらその瞬間、既に阿保さんの罠(?)にひっかかってしまっていたのかも知れません。暫く見ていると、(触ったりもして)堅く締まった造りと、細さと軽さとのバランスから頑丈さを感じ取る事が出来て、細さが気にならなくなってきました。むしろその繊細さが発している緊張感が心地よくなってきたのです。生活で使う物の “デザイン” とはどういうものか?の答えの一つがここにあるのではないかと思いました。

椅子やテーブルは実際に使う “物” ですから、使っている時の、手触り、重さ、堅さ、弾力、温度そして強度などの全てが、外から見た時にイメージされてしまいます。意識して居なくても、一目見た瞬間にそれら全てを感じ取って、そのデザインが好きとか嫌いとか(心地よいとか悪いとか)、人の脳は判断しているのです。ですから家具などは、作る人(優れた技術を持っている職人)が形を決めないと本当に良いデザインはなかなか産み出されません。たとえば、物を作った経験が乏しい人がどんなに遊び心に溢れた楽しいデザインを考えても、作ってみるとあんまり面白くなかったりします。また、図面上で美しく出来たデザインでも、実際に作るとバランスが悪かったりする事もしばしばです。それは、真っ直ぐな物が真っ直ぐに見える為には真っ直ぐに作ってはいけないなどと云う、物作りの経験が豊富で無いと分からない事が沢山あるからです。手作りでしか出来ない微妙な調整が、案外デザインの要であることが多いのです。

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会場で阿保さんはイタリアの建築家 ジオ・ポンティ の作った “スーパーレジェーラ” という木の椅子の話をしてくれました。レジェーラというのはイタリア語で軽いという意味ですから「超軽量」という名前の椅子です。すごく細身で重さが1,7kgしか無く(1,3kgのものもあるらしい)、強度を得る為に足の断面が3角形になっているのだそうです。制作に8年も掛かり、「やっぱり、それだけのモノを作るには8年くらい掛かるんだよね」と、試行錯誤の必要性を語るのでした。今回出品した自分の椅子に対しても、「前側の足の接続部の負担を軽減するために足の下の方をもっと細くした方が良いんだよね」と、次の課題が見えているようです。確かに言われてみればその通りで納得がいきました。きっと、どの程度細くすればバランスが良いのかを探って行くうちに、更にデザインが洗練されてくるのでしょう。
そう云ったような話の中で阿保さんが、椅子の背もたれの穿った部分の角のエッジが立っている事について発した言葉が冒頭のセリフです。実は阿保さんがいない時、知人とこの椅子の背もたれの話をしていたのです。その人は寄っかかった時に背中が少し痛いのでカドを取った方が良いと言いました。その意見に私は賛同出来ずに、座ってみて「僕は肉付きが良いから痛くないけどなあ…」なんて、やんわりと反論したのでした。何故かと云うと、そこの形を丸めて “ぬるく” してしまったらなんだか美しくなくなると感じたからです。どうして美しくなくなるのか?ということについては明確な答えが見付けられずモヤモヤしたままでした。でも、背中が痛いからという “使い心地” のことを言われると強く反論出来ないので、その点でもモヤモヤっとしていたのです。
陶器の茶碗やお皿でも、木工家具でも角の部分のエッジの利き方一つでその作品の印象が一変します。どの程度カドを立てるのか、あるいは丸めるのかで、重くも軽くも、頑丈にも脆くにも、柔らかにも硬くにも見えます。扱い方も豪快に出来たり、そっとやさしく気を使わなければならなかったりと、(実際の強度とは別に)左右されます。その選択が作者の作品に込めるメッセージ、デザインの重要な要素なのです。

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阿保さんの一言で、彼のデザインの意図がはっきりしました。それを私が汲み取れたことが分かってとても嬉しく思いました。同時に、それは私の「絵画」の見方にも共通するものである事が思い起こされて、頭の中の霧が晴れる思いがしたのです。彼の家具のエッジに対するこだわりは、絵画の空間表現の重要な要素 “描かれた物の輪郭の扱い方” に共通する要素なのだとガテンがいったのでした。もしかしたらそれは私の早合点かも知れませんが、近いうちに彼の事務所に遊びに行ってそれを確かめたいと思います。年に何回か私たちは すご〜い 長話をします。短い時でも2時間位、長いときは5〜6時間。お酒も飲まず、私の家内と阿保さんの事務所のミネさんと4人で延々と話すのです。きっとまた今回も家具の話に始まって、いろんな話を延々とすることになるでしょう。
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by mosaiquedodeca | 2010-03-09 00:11 | 阿保さんと耕木杜 | Comments(0)