ガラスモザイクに関する様々な事を綴り、紹介するブログ


by mosaiquedodeca
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ビーグルの思い出

 八王子の借家に住んでいた時、迷子の犬を保護した事があります。近所をうろついていた犬を一時的に預かって飼い主を捜しました。犬の似顔絵(肖像画)を描いて電信柱に貼付けたりしました。動物NGの家だったので、こっそりと玄関に匿っていましたが、夜中に遠吠えをするので近所に住んでいる管理人にバレないか、ドキドキしました。何日か経っても飼い主が見つからなかったので、地元の友人に私たちの代わりに保護して新しい飼い主を捜してくれないかと頼みました。彼は農家の長男で、敷地が広いので遠吠えをしても近所迷惑にはならなそうでしたから。彼は「取り敢えず見に行くよ」と言って直ぐに来てくれました。そして犬をしげしげと眺め、そのまま連れて帰りました。飼ってくれる人を捜すのかと思ったら、そうではなく自分が飼うつもりで見に来たのだそうです。番犬が欲しかったとの事でした。

 その犬はビーグル犬でした。他の犬種が混じっているようには見えなかったので、多分純粋種だったと思います。私たちはビーグルを縮めて “グル” と呼びました。黒と白と茶色の組み合わせが、ヨーロッパの上品な色合い、イメージとしてはイタリア紳士の晩秋の服装のようで、なんとも言えず美しいと思いました。このシックな色合いは “黄金” の組み合わせのように感じ、すっかり気に入りました(※1)。4日間という短い期間でしたが、初めての犬との生活はしっかりと心の中に残りました。 “なんて可愛いんだろう、家で飼えたらどんなに嬉しかろう” と思いました。ビーグルの哀愁に満ちた眼差しに心を奪われてしまったのです。

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  紙がかなり古くなって痛んでしまいましたが、その時に描いたグルの様子です

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  顔の正面からも描いたような記憶がありますが、それは見つかりませんでした

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 八王子には4年間住み、その後千葉県に家を建てて引っ越しました。5年程して家の裏に死にそうになってうずくまっていた子犬を保護して飼ったのがクーコです。クーコは日本犬の血の濃い犬でした。グルに魅せられた体験から、私は飼うとしたらビーグルが良いと思っていました。しかし、目の前の消えそうな命を見た時には そんな事は頭の中からすっかり消えていました。飼い始めたら今度はクーコの可愛さに魅入られて “日本犬って良いな、この可愛さは洋犬の比じゃない” なんて思うようになりました。日本犬は世界の犬の中でも特別な存在にすら思えました。誰にでも愛想の良い洋犬(私の勝手なイメージですが)に比べ主人以外には懐かない、凛とした性格(これも勝手なイメージ)がとても素晴らしい特質だと。事実クーコは私たち以外の人間には愛想良くはしても決して心を許しませんでした。他の人とはいっさい散歩が出来なかったのです(※2)。ナンダカンダ言って、結局出会った犬はみんな好きになるんじゃねえか?って突っ込まれそうですが・・・。そうかも知れませんが、私に自覚はありません。

 ユーちゃんが来てから思った事は、彼女にはビーグルの血が少し入っているのじゃ無いか? と云う事です。少し首を傾け二重まぶたでじっとこちらを見るその眼が、忘れていたグルを思い出させました。顔の皮が少し余り気味で眉を寄せると眉間に見事な皺が出来て “困った顔” になるところ。ビーグルのようにちょっとコミカルな表情を見せるところはとてもキュートでチャーミングです。家内によれば、散歩の途中にすれ違う人が何人も振り返ってニコニコして見るのだそうです。私も先日同じような体験をしました。グレーのふわふわ毛の大型犬(多分秋田犬)を連れたおじいさんが、その犬に向かって背中の毛を逆毛立て唸り声をあげているユーキを見て、満面に笑みを浮かべ「良い犬だねえ」と言うのです。「何かいろいろ混ざっているみたいなんですよ」って返すと「良い犬だ、カッコいいよ!」とニッコニッコ顔で言いながら去っていきました。何だろう? 良い犬って言われて凄く嬉しかったのですが、何かちょっと引っかかる感じが・・・。もしかして、雄犬だと思われたのでは?? ま、いいか。さてもう一つ、グルを思い出させたのはご飯の食べっぷりです。グルは缶詰をあげたらあっという間に食べてしまうのでびっくりしました。一口か二口で平らげてしまうので、洋犬て凄いなあと思いました。ユーちゃんもそれに近いものがあって、何をあげても速攻平らげてしまいます。クーコとは大分違います。親兄弟とはぐれて私たち夫婦に大事に育てられたクーコは、脇から誰かにご飯を盗られる心配が無かったからでしょうか、ゆっくりと落ち着いて食べました。ユーちゃんはきっと大家族の中でくんずほぐれつ、争いながらご飯を食べて育ったのでしょう。それとも、もしビーグルの血が混じっているのなら、元々の性質なのかも知れません。

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          それにしても見事な額の皺

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          秋田犬に向かう勇猛なユーキ


 前回の記事でも書きましたが、ユーちゃんは最近散歩の途中で犬や猫に遭遇すると逆毛立つことが多いです。思い起こしてみると、最初の頃はそんなこと無かったように思います。つまりこれは、 “ここら一帯は自分の縄張りだ” って自覚してきたという事でしょうか? 始めはよそ者らしくしおらしい態度だったけれど、自分の縄張りとなれば違います。この中で出会うヤツに “ここは自分の散歩の場所だって示しとかなくっちゃ” と云う事なんですね、きっと。そして一昨日、もう一つユーちゃんが以前と違って来たと思える場面を見ました。散歩中にEさんに出会った時の事です。「こんな遠くまで散歩に来てるの?」「ええ、よく来ます」こんな会話をしながらEさんがユーちゃんを撫でようとしたら、ユーちゃん、後ずさりしたんです。何だか怖がっている様子。来たばっかりの頃に会った時は、一生懸命愛想良くして可愛がってもらっていたのに・・・。 “この人だ〜れ? 可愛がってもらっても大丈夫なの? お父さん” てな顔で振り返り、私の反応を確かめます。そして、恐る恐る近づいてようやく頭を撫でてもらいました。これはどういう事なのでしょうか? “良く知らない人にはもう愛想良くしなくても良いんだよね! だってもう私はO家の家族なんだから” って事?

 さて八王子のグルは友人の家で「ジョン」という名前になって、立派な番犬になりました。何ヶ月後かに彼の家を訪れた時、私たちは思いっきり吠えられてしまいました。命を助けてあげたのに、あんなに私たちにすがっていたのに、なんて恩知らずなヤツかと一瞬思い、なんだか寂しい気持ちになりました。しかし、 “新しい飼い主の所で一生懸命仕事をしているのだ、これで正解なのだ” と思い直す事にしました。でも、ちょっと複雑な気持ちでした・・・。

 アグリ犬猫里親会の保護っ子を預かっている方達はもっと長い間、一生懸命関わる訳なので、もっともっと情が移るんだろうなあと思います。きっと複雑な気持ちを抱えながら卒業(譲渡先が見つかる事)させ、また次の犬を預かる。そしてまた・・・。私たちには真似出来ませんね、いろいろな事情もあっておそらく無理です。その代わりと言う訳ではありませんが、そんな風に縁を繋いでもらったユーちゃんを大事にすることでその苦労に報います。それが私たちの役割で、多分一番喜んで頂ける事だと思っています。私たちには「博愛」はなかなか難しいけれど、「家族愛」なら沢山持ち合わせがあるのです。

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       頭を撫で撫で

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       夕食後のまったり顔

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       私の手にやたらちょっかいを出すと思ったら・・

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ぺろぺろぺろぺろ・・ぺろぺろぺろぺろ。以前は自分の足をぺろぺろして、私の事は無視だったけど、今はこんなに親愛の情を示してくれるようになりました。とっても嬉しい。だけど・・この後、手がヌルヌルして石けんで洗ってもなかなか取れませんでした。



(※1)その後家で飼った犬猫は総てこの組み合わせでした。猫のプータはアメリカンショートヘアー(模様や体型、性格はアメショーそのものだったので、おそらくその雑種)のブラウンタビー、黒と茶色と白。アメリカンショートヘアーと言えば黒と白のシルバータビーが一般的ですが、プータは茶色が入っていました。クーコも同じ色の組み合わせでした。そして、外見がクーコにそっくりだったことが我が家に来るきっかけとなったユーキちゃんも、当然同じです。これは偶然でしょうか・・・。
 ただ、人工的に作られた種類以外の、つまり雑種の犬猫は基本的なこの3色が混ざるのが自然なような気もします。 犬や猫は人間との歴史が長いので人の手で飼い易いように、また特定の仕事に向くように変えられてきたのは理解しています。外見もそれに伴って、より特徴的に、人の趣向に合わせて作られている事も。 しかし私はどちらかと言うと色んな血が混ざった、言葉は悪いですが少々トッチラカッタ、ある意味でナチュラルな、そういった存在に美しさを感じてしまいます。 それは、画家である私が、奇麗に手入れされた庭園を風景画として描く気になれないことと似ています。刈り込みの入った松の木などは全く絵になりません。他の人から見ればどこにでもある何でも無いような風景の中から、独自の視点を持って絵を構成するのが画家の仕事です。既に庭師というアーチストが仕事をした後の庭からは自分のやるべきナニモノをも見つける事が出来ないのです。風景を描くなら、そう遠くない範囲で、山や木や森、畑や田んぼ、川や道等どこにでもあるものの中から、見る場所によって面白く感じられるポイントを探して描きます。
 クーコが天国に行ってから、次に飼う犬はペットショップやブリーダーから買うことは全く考えていませんでした。私は偶然に生まれたその犬固有のもの、私にしか見つけられないような良さに惹かれます。そういった存在の中に、よりいっそうの美しさを見てしまうからです。
 里親募集サイトならそういう犬を必ず見つけられると思いました。探したのは犬種のはっきりした犬ではなく、クーコのように何が混じっているのか分からないが、とっても “可愛い” 犬でした。そして見つけたのがユーキだったという訳です。
 ここで言う “可愛い” というのは、例えば “子犬が可愛い” と云うのとはちょっと違います。子犬はとっても可愛いですが、それはどんな個体にも共通の “赤ちゃん” としての可愛さです。無垢な存在そのものが可愛いのです。それとは違って私の言う可愛さというのは、その犬の性格と生い立ちや置かれていた境遇などが相まって醸し出される、個体としての可愛さです。いわゆる個性のことですが、それは未成熟な子犬よりも成犬の方がより見つけやすいのです。 今でも里親募集サイトを毎日見ていますが、私(たち)の目に留まるのはそういった犬ばかりです。我が家では多頭飼いは難しいですが、どうしても “もしこの子がユーキちゃんと一緒に家にいたら・・・” なんて想像をしてしまいます。


(※2)クーコは私たち以外の人間が散歩させようとしても決して追いて行きませんでした。毎日頭を撫でて可愛がってもらっている人にリードを渡しても、2〜3歩行ったところで、ピタッと足を止めて後ろを振り返ります。そして私(あるいは家内)が行かない事が分かるとそこから先は一歩も進みません。私たちのどちらかが後をついて行けばそのまま行くのですが、その人だけだと行かないのです。
 ☆ たった1人だけ例外の方がいました。その人は私たちも大好きな方で、全く邪心の無い天真爛漫な、天使のような方でした。とても明るい大きい声で「さっ、クーコ行くぞ!」って歩き出すとクーコもつられてピョンピョン歩いて行きました。私たち以外でクーコと散歩が出来たのは後にも先にもその人だけでした。




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by mosaiquedodeca | 2016-03-13 06:54 | 猛描プータと愛犬クーコの話 | Comments(0)