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ガラスモザイクに関する様々な事を綴り、紹介するブログ


by mosaiquedodeca
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猫のお誕生日プレゼント

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 今のペット猫からは考えられませんが、私が子供の頃の猫はネズミを捕って食べていました。昔の家にはネズミが住みついていて、夜中などに天井裏でゴソゴソ音がしたり、納戸の中の柱などがネズミに齧られたりしていたのです。かつて猫はネズミを捕ってもらう目的で飼われていた時代がありました。
 私の母親はネズミ年生まれで猫が大の苦手でした。従って我が家は基本的に猫を飼わない家でした。しかし、どういういきさつか知りませんが、私が小学生の頃一度だけ飼ったことがあります。多分どっかから頼まれて仕方なくもらってきたのでしょう。その猫に何と言う名前を付けたかも憶えていませんが、私は結構可愛がっていました。猫にはいわゆる猫まんま(ご飯にみそ汁をかけたような餌)をあげてはいましたが、時々ネズミを捕ってきました。そういう時は大抵ネズミはトドメを刺されないで半殺しの状態で運ばれてきます。猫はいつも私達の目の前でいたぶって見せるのでした。わざとよそ見なんかしたりして、ネズミが逃げ出すのを待っています。隙を見てネズミが動き出すと、途端に襲いかかっていたぶり、観念してグッタリするとまた放り出して知らんぷり。そんなことを繰り返してさんざん遊んだあげく、バリバリと食べ始めるのでした。骨としっぽなどを残して結構器用に食べていました。
 この猫はネズミにはこのように強かったですが、猫の社会の中ではあんまり強い奴ではなかったらしく、喧嘩で負けてよく怪我をして来ました。前の家の猫は反対にすごく強い猫で、よく虐められていたようです。祖母がよく「あの猫はヨクナシ(うちの田舎の方言で、意地悪とかきかん気が強いという意味)だ」と言っていました。
 飼い始めた最初に猫のトイレを作って躾けなければいけないということで、ミカン箱(昔のミカン箱は板で出来ていました)に砂を詰めて台所の土間の所に置きました。猫は案外直ぐに憶えていつもここで用を足すようになりました。しばらく問題はありませんでしたが、そのうち誰かが「食事をする場所の近くにトイレがあるのは嫌だ」と言い出しました。確かにそうだということになり、協議の結果、母屋と作業場の屋根の掛かっている通路の下に置く事になりました。実はこれがとんでもない事になったのです。
屋根が掛かっているとはいえ、そこは屋外です。今思えば猫が割合にすんなりと最初のトイレを憶えた事には理由があったのです。プータを飼ってから知ったのですが、家の出入りを自由にしている猫は外の砂地のように土が柔らかくなっている所を掘ってウンコやオシッコをするのです。片手で丁寧に真っ直ぐ下に掘り込んで、縦穴を空けてからそこにしゃがみこんでゆっくりウンコをします。唯座っているだけのような、何をしているのかよく分からない恰好で用を済ますと今度はまた丁寧に土を戻して穴を埋めます。犬とは違ってとにかく仕事が丁寧です。
 座敷猫は外に砂地を探しに行けない訳ですから当然家の中に猫砂を用意しておけばそこにオシッコやウンコをするようになります。それでは何故出入り自由なうちの猫が、直ぐに家の中のトイレを憶えたのか? 実は、いつなんどき、隣りのいじめっ子猫に出くわすか分からないので外ではトイレが出来なかったようなのです。家の中迄はそいつは入って来ませんから安心してトイレができたのです。だから直ぐに憶えたのでした。そうとは知らず、猫のトイレを外に出したのが災いの始まりでした。同じミカン箱のトイレなのに、自分のオシッコの匂いが染み付いている砂なのに、家の外にあるばっかりにそこではもう二度と用が足せなくなってしまったのです。そしてどうなったのかというと、最初は我慢していたのでしょうが、とうとう我慢しきれなくなって家中のいたるところでオシッコとウンコをするようになったのです。これはもう最悪で、ウンコはまだいいのですが、オシッコで茶の間の畳はしみが付いてしまうし、座敷の天井板は茶色く染まって部屋中に匂いが漂っています。台所にトイレがあった時はそんなに匂わなかったのですが、天井板から匂ってくる匂いはとても臭かったです(※1)。 猫のオシッコというのは独特の臭みがあってたまったもんではありません。トイレを元に戻してももうダメでした。叱っても何をしても、猫に通じる訳がありません。トイレが無くなってパニクった猫を躾ける術はありませんでした。ましてや家族全員が猫を飼うのは初めてだったのです。

 結局うちではもう飼えないということになって、どこかに貰ってもらうことになりました。でも、大人になってからこの時のことを思い返してみると、どうにも腑に落ちない点があります。小学生だった私には他所の家に貰われていったという説明がされていましたが………どう考えてもおかしいですよね。家中にウンチやオシッコをする猫なんて貰ってくれる家なんてある訳がありません。何年か前、実家で酒を飲んでいる時にふとこの猫の事が話題になり、この疑問を言ったら、とうとう兄が白状しました。「誰もやらないから仕方なく俺がやった」と。どうやって殺したのかは言いませんでしたが、多分袋に大きな石と一緒に入れて川に沈めたのでしょう。このことは、姉も女だからということで知らされていなかったようです。大人と長男だけが知っている、家族の秘密だったのです。でも、私も何となく分かっていたような気がします。母が他所に貰われて行ったと私に言ったのを憶えていますが、どの辺の家なのか何と言う名前の人なのかとか全く追求した記憶がありません。問いつめてはいけないような気がしていたんだと思います。
 ペットを捨てる人が憎いとは思いますが、あんまり人のことは言えない感じがします。でも、考え方によるのでしょうが、捨てるのでは無く自分達で始末をするのは一寸だけマシなような………目を瞑らないで、痛みを分かち合うような感じがします。まあ、どっちも人の都合ですることには違いがありませんが。

 ところで、今のペット猫がネズミを全く捕らないかというと、そうでもありません。ちゃんと捕ってきます。猫のDNAが変わった訳ではありませんので狩りをする本能はしっかりと受け継がれています。ただし、食べはしません。プータも年に一回くらい小動物を掴まえて来ました。モグラの子供だったり、野ネズミだったりしましたが、スズメを捕ってきたこともあります。スズメなんて空を飛ぶものをどうやって掴まえたのか想像がつきませんが、人に訊くとやはり捕る猫はいるようです。そう言えば庭で身を屈めてジッとスズメが地面をついばんでいるのを見つめているプータを見た事があります。そこからどうやってスズメとの距離を縮めるのかと思うと不思議ですが、とにかく掴まえてきました。そして案の定スズメは生きたまま居間に置かれるのです。これは最悪で、片方の羽だけが折られているようで、床面をバタバタとあっちこっち動き回るのです。ネズミなんかと比べてスピードがあるのでプータにとっては追っかけ甲斐があってとても面白そうでしたが、こっちは大迷惑です。つかまえて庭に放り投げましたが、しばらくすると又掴まえて来て遊んでいます。最後は庭に穴を掘って埋めてやりました。
 ある冬の日、家内が買い物から帰ってくると居間にネズミ転がっていました。家内は直ぐに箒と塵取りで片付けましたが、プータはそれを不思議そうな顔をして見ていたそうです。その日は丁度家内の誕生日で、彼女が言うにはプータが誕生日プレゼントを呉れたのだそうです。年に一回くらいしか、獲物を捕らないのにその日に限って持って来たのだから絶対にそうだとと言います。キャーと悲鳴をあげながらそれを片付ける家内を見て「なんで喜ばないの?片付けちゃうの?」って顔をしたと言い張ります。偶然だとは思いますが、確かに不思議といえば不思議です。やっぱりプータは、懲らしめに猫に姿を変えられたどっかの国の王子なのかしら? もっとも、家内は誕生日プレゼントをしなくなってから久しい私へのあてつけで言っているのかも知れませんが………。

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    何か獲物を狙っているのでしょうか?
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     ダッシュ!
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    顔がこっちを向けばしっぽは向こうへ

※1 これは知り合いの大工さんに聞いたのですが、尿の匂いの主成分であるアンモニアは空気より比重が重いので下に流れるのだそうです。そう言えば昔実家にあったポッチャントイレは下にも窓がついていました。下から匂いを逃がす為だったのですね。因みにその大工さんによれば今の住宅のトイレの換気扇が上についているのは間違っているのだそうです。換気扇でわざわざ匂いを上に立ち上らせているのですから。彼の造る家はトイレの換気扇が下についています。家はこういう大工さんに建てて貰いたいものですよね。
by mosaiquedodeca | 2009-03-18 17:00 | 猛描プータと愛犬クーコの話